良質な「表現の言い回し」を覚えよう

参考資料:
新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ


著者:唐木元(からき げん)

1974年東京都生まれ。株式会社ナターシャ取締役。大学在学中よりライターとして働き始める。卒業後は事務所「テキストとアイデア」を開設、雑誌を中心に執筆・編集の現場に従事した。2004年より編集者として、ライブドア・パブリッシング、幻冬舎、KI & Company(ジーノ編集部)と3つの出版社に勤務。2008年、株式会社ナターシャに参加し、編集長として「コミックナタリー」「おやつナタリー(終了)」「ナタリーストア」を立ち上げた。
参考:cakes

文頭一語目に続く読点は頭の悪そうな印象を与える

さらに、その公演ではかつてのナンバーも披露して会場をわかせた

さらにその公演では、かつてのナンバーも披露して会場をわかせた

これはルールというよりフィーリングに属する問題ですが、文頭一語目の直後には読点を打たないほうが、多くの場合、スマートに感じられます。

特に危険なのは、一語目が接続詞のときと、文頭で主語を形成しているとき。これらに続く読点は、仮に意味的に正しくても、間の抜けた印象をもたらしがちです。

なぜ間が抜けた印象になるのでしょうか。いきなり読点を打つと、内容を考えながらしゃべっている人の口調に似てしまうからではないか、と私は考えています。

私は、その日大阪へ旅行に出ていました。

私はその日、大阪へ旅行に出てしまいました。

小学生の作文のような原文が、読点の位置を下げるだけで、大人っぽい印象になったのではないでしょうか。もっともこの感覚は前後のリズムによって変わってくるので、絶対的な公式とはなり得ません。語呂・字面・意味の3つの見地で読み直しながら、つどつど吟味してください。

ただでさえ減らしたほうがいい接続詞は、読点をともなうと野暮さが倍増します。語呂を優先してスマートなリズムを整えましょう

約物の使いすぎは下品さのもと

「二階堂ふみ」「星野源」が主演する、メーキャップブランド【マキアージュ】“スペシャル”ショートムービー「Snow Beauty」が、特設サイトにて公開されている

二階堂ふみと星野源が主演する、メーキャップブランドマキアージュのスペシャルショートムービー「Snow Beauty」が、特設サイトにて公開されている

約物とは文字や数字以外の記号のこと。かっこの類いや、クエスチョンマーク、リーダ、ダーシ、中黒、忘れがちなところでスペースも約物です。

句読点に正しい用法があるように、約物もそれぞれ正しい用法が定められています。しかし現代のメディアは、かなりルールから逸脱した使用例が見かけられるようになってきました。

原文では、ただ文字列を強調するだけの意味合いでさまざまな約物が使われています。かぎかっこは会話文や固有名詞を明示するための約物ですが、キャッチコピーなどでしばしば、文字列を強調するために使用されているのを見かけます。ダブルコーテーション(“”)も、本来は「いわゆる」といった意味を表す記号であり、一般的でない特殊表現に対して使うのがルールのため、改善文では外しました。


「ガンダム」新シリーズ発表 キャラは原案はなんと!?「シュトヘル」の伊藤 悠!!

「ガンダム」新シリーズ発表、キャラは原案は「シュトヘル」の伊藤 悠

エクスクラメーション(!)で強調するのも、安易な表現と言わざるを得ません。約物を使うとその部分が強調され、文脈が整理されて見えるのは事実です。しかし乱用するのは端的に言って文章文章の品性を下げる結果になります

約物に頼らずとも要素を整理し、強調したいことは強調して伝えられる腕前を身に付けましょう。イージーな約物への依存は、書き手としての成長をも阻害してしまいます

  • 約物の例

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ルールから外れた約物づかいは、力量のなさが現れたものと捉えましょう。飛び道具なしでも読み手に響くよう、腕を磨きたいものですね

丸括弧の補足は慎み深さとともに

主人公のタケシ(設定では未来からタイムスリップしてきた)は、予知能力者として祭り上げられてしまう(未来人ゆえこれから起きる出来事を知っているため)

未来からタイムスリップしてきた主人公のタケシは、これから起きる出来事を未来人ゆえに知っているため、予知能力者として祭り上げられてしまう

丸かっこを用いた補足的な説明は、最小限に抑えましょう。

文章に組み込めなかった言葉を補足するのに、丸かっこは便利な約物ですが、多用するのは自らの文章構成力が低いと宣言しているようなものです。できるだけ地の文で説明するように心がけてください

例文ではタケシの補足説明として、「(設定では未来からタイムスリップしてきた)」が加えられています。唐突な印象になりますし、メタ言及的な雰囲気も漂います。できるだけシンプルな構造とシンプルな文で書くように意識して、約物に頼らずに強調や整理ができる筆力を養いましょう。

丸かっこには本来的な用法として、注記や読みを示す機能が与えられていますが、それもあまりにも連続するのは考えものです。

薬物全般に対する考えと同じく、文字以外の活字の割合は、最小限に抑えるのがスマートでしょう。

会話文で見かける「(笑)」も、過剰だとイタい印象を与えます。使わないで表現できないか、常に考える癖をつけましょう。

可能表現に頼らない

DISC1にはアルバム本編が収録されている。DISC2では未発表曲を含むレアトラックを聴くことができる。DVDでは特典映像を観ることが可能だ


DISC1にはアルバム本編が収録されている。DISC2は未発表曲、レアトラックというラインナップ。DVDでは特典映像を観ることができる。

「~できる」「~可能だ」「~れる」といった可能表現は、ならべく減らすべきフレーズのひとつ。

なぜ減らすべきなのか?

それはモノを説明するとき、可能表現は大変使いやすく、なんならすべての文末が可能表現になっている文章を見かけるくらい頻出してしまうからです

なにしろモノの特性に「できる」「可能だ」と付けるだけで文が成り立つので、一切の工夫もなしに書き進められます。そのイージーさは、文章力向上の妨げになりますし、なにより読み手からすれば安直な印象を免れ得ません。

例文はCDの商品記事紹介ですが、収録内容を可能表現で列挙しているところを、別の文末に置き換えました。属性を列挙するだけの原文に比べて、説明の流れが滑らかになったのではないでしょうか。

このボールペンは滑らかに書くことができる。ノックをしてペン先を押し出すことができる。クリップで手帳に挟むこともできる。胸ポケットに収納することも可能だ

このボールペン一番の魅力は滑らかな書き味にある。ペン先はノックすると押し出される仕組みだ。クリップは手帳に挟んでもいいし、胸ポケットに収納するときにも役立つ。

可能表現を極力避けて書き直す言い換えのひと手間が、文章に丁寧な印象を与えてくれます。そのひと手間を惜しまないマインドセットを、ぜひ身に付けてください

便利な「こと」「もの」は減らす努力

自分のことを理解することで、成長することができるようになる。

自分を理解すれば、成長できるようになる

語句に「こと」を付けて名詞化する用法はとても便利ですが、どんな事柄にも適用できるため、重複しやすく、表現もくどくなりがちです。

例文では原文の「こと」をすべて削除しました。回りくどさがなくなり、スッキリした印象になりましたね。

原因や手段を「ことで」でつなぐ用法も非常によく見かけます。

運動することで、健康になる。

運動する、健康になる。

このように「ことで」を使わずに済む文は、別の表現を探したほうがスッキリした印象になります。

次の例文では「こと」を取るだけでなく、続く述語にも手を加えました

よく眠ることが必要だ

よく眠る必要がある

ときにはこのように分解して、「こと」の重複を避けるといいでしょう。

「こと」と同様に、「もの」も注意が必要な言葉です。あらゆるモノを表せるため、頼りすぎると表現がボンヤリします。

卓上の電気ポットは手軽にお湯をわかすために便利なものだ。

卓上の電気ポットは手軽にお湯をわかすために便利な道具

原文でも意味は通じますが、具体的な名詞に差し替えたほうが、読み手の理解が深まる文になります

イージー表現の代表選手が「こと」「もの」。頼りそうになったら、もっと適切な表現ができないか、考える習慣をつけましょう。

なんとなくのつなぎ言葉を使わない

音楽をPCで聴く人が増えてきた。そうした中、アナログレコードの再評価ブームが起きている。

音楽をPCで聴く人が増えてきた。そうした中、高音質でデータの配信サービスが人気を博している。

特に意味のないつなぎ言葉を、なんとなく使ってしまうことがあります。例文にある「そうした中」もうっかり使ってしまう代表例ではないでしょうか。もともとは「そのような状況において」という意味で、前の文で提示された内容を受けるつなぎ言葉です。

原文では前の文の状況と後ろの文の内容がうまくかみ合っていません。改善文のように、前の文の状況を踏まえた内容を入れましょう。

お弁当のほうは温めますか。

お弁当は温めますか。

「ほう」はなくても意味は通じます。口語的な表現ですし、丁寧にしているつもりで意味がないつなぎ言葉です。

私は基本的に大丈夫です。

私は大丈夫です。

「的」を付けた言葉には、語句の印象をソフトにする効果があります。特に「基本的に」「一般的に」などは、例外はある、と含みを持たせるためについ雰囲気で使いがちな言葉です。必要以上に使うと文章がボンヤリした印象にになりますから気を付けましょう。

口語的な表現で、逆説でない文章をつなぎに「逆に」を使うケースもよくあります。

今日は雨でした。逆に明日は晴れるそうです。

今日は雨でした。明日は晴れるそうです。

話し言葉に影響されたつなぎ言葉は、論理を混乱させ、文章をくだけた印象にしてしまいます。くれぐれも注意しましょう。

話し言葉では丁寧に聞こえる気がして使っている言葉でも、文ぽ状は怪しいものが多々あります。文章では極力避けるようにしましょう。

トートロジーは子供っぽさを呼び込む

そのデザートは、スポンジ生地の上におイップクリームとピスタチオがトッピングされたデザートです

そのデザートは、スポンジ生地の上にホイップクリームとピスタチオがトッピングされています

「その花は、花です」。誰でもムムッと違和感を抱く文章ですね。言うまでもなく、主語と述語が同じところに違和感の原因があります。

こういった主述同一文は「トートロジー」と呼ばれ、基本的に回避すべき文型です(厳密に言うとトートロジーには同義循環や同語反復といった様々なタイプが存在しますが、ここでは同一文に絞って話を進めます)。

さて「その花は、花です」。のおかしさは誰でも気づきますが、「その花は、南国に咲く花です」ならどうでしょう。付け加えられた修飾語が、もともとあった違和感を薄めていることがわかりますか。

しかしこれも構造に還元すれば主語と述語が同一であり、それゆえに、敏感な人なら一抹の間抜けさを感じ取ってしまうものです。避けられるなら避けるに越したことはないでしょう

例文も「スポンジ生地の上にホイップこリームとピスタチオがトッピングされた」という情報で修飾されているものの、構造に還元すれば「そのデザートは、デザートです」と繰り返しになっています。改善文では、述語を変更して繰り返しを避けました。

そのアーティストは現在もっとも影響力を持ち、2016年には大規模なワールドツアーを予定しているアーティストだ

そのアーティストは現在もっとも影響力を持つ10人に選ばれた。2016年には大規模なワールドツアーを予定している

2つ目の例文も同様です。修飾を外せば「アーティストは、アーティストだ」であり、スマートな表現とは言えません。

「お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだよ」といった具合に、特別なレトリックとしてトートロジーを使う場合もありますが、一般的な文章では、読み手にも違和感を与えてしまいます。うっかり使わないためにも、構造に還元して読み返す習慣を身に着けましょう

「その企画はホニャララな企画です」という文章のつたなさに意識的になりましょう。よりスマートな言い回しがかならず見つかるはずです

参考資料:
新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ


著者:唐木元(からき げん)

1974年東京都生まれ。株式会社ナターシャ取締役。大学在学中よりライターとして働き始める。卒業後は事務所「テキストとアイデア」を開設、雑誌を中心に執筆・編集の現場に従事した。2004年より編集者として、ライブドア・パブリッシング、幻冬舎、KI & Company(ジーノ編集部)と3つの出版社に勤務。2008年、株式会社ナターシャに参加し、編集長として「コミックナタリー」「おやつナタリー(終了)」「ナタリーストア」を立ち上げた。
参考:cakes