あなたは答えられますか?データ解析で得られる5つ価値

参考資料:
データ解析の実務プロセス入門

著者:あんちべ

出版社: 森北出版

データ解析で得られる5つの価値

結論からいきましょう。データ解析で得られる価値に大きく分けて次の 5つがあります。

  1. 状況が把握できる
  2. 推定ができる
  3. 予測やシュミレーションができる
  4. 反復と再現ができる
  5. 裏付けができる

得られる価値を正しく認識していれば「データ解析で次のような価値が得られるからこのような時間・予算をかけてでもやってみよう」などと、データ解析に割けるコストも含めて決めることができます。

データ解析で得られる価値とはどのようなものでしょうかその具体的なイメージをつかむためには実際にデータ解析がどのように用いられているのかを知るのが良いでしょう。

本記事では、データ解析でどのような価値を得られるか、実例を交えて説明します。

データ解析に限らず費用対効果を考慮して行動しなければなりません。費用とはたんに金銭だけではなく人や時間、設備などのリソースを含んでおり、データ解析で得られる価値が素晴らしいものであっても、それを上回る費用がかかるのであればデータ解析をすべきではありません。

そもそもデータ解析に取り組むべきかどうかを決断するためにもまずはデータ解析のによって得られる価値を明確にしましょう。

1.状況が把握できる

ボトルネックを推測するな、計測せよ。

―ロブ・パイク

データ解析が状況を把握に役立つ例として、ここにはソーシャルゲームを例に取り上げてみます。

昨今のソーシャルゲームではゲーム性が複雑になったため、操作が世界観説明する「チュートリアル」を入れることがよくありますところが、チュートリアルを設けることの問題としてゲームを遊ぶのも楽しみしてるプレイヤーも、チュートリアルの時点で「長々とした説明を受けたくない」「新しいことをわざわざ理解するのが面倒」などの理由でゲームから離脱される方がかなり多いという点があります。

ゲームによっては、せっかく新規登録していただいたにもかかわらず7割程度もその時点で離脱されるそうです。

事例として、チュートリアル中のどのステップで新規プレイヤーが離脱しているのかを調べ、何が新規プレイヤーの離脱要因なのかを洗い出して改善することがあります。

チュートリアルのどのステップを改善するかを開発チームと相談したところ、アニメーターは「アニメーション部分が最も処理が重くなるのでオープニングムービー部分で離脱しているのでは?」、シナリオライターは「世界観説明が長すぎるのでは?」と各々の専門知識に従って意見を出してくれました。

そこで、チュートリアルの各ステップでログを取得し、各ステップで離脱するユーザーがどの程度存在するのか、各ステップをクリアにするのにどの程度の時間がかかるのかを計測しました結果、キャラクターを選ぶところが一番離脱しやすかったのです。

そこが悪いとわかれば、その理由として「プレイヤーに選択という能動的な行動を強いるからではないか、特に、まだ世界観も何もつけてないにもかかわらず、ゲームの進行が大きく左右するキャラクター選択をさせるのが悪いのではないか」のように、ゲームの分野の専門知識と紐付けて問題と投げることができました。

しかも一度そのような視点を得たことにより、「プレイヤーに能動的な選択を強いると離脱を招きやすい」という、より応用の利く知見が得られました。

このことから、とあるソーシャルゲームでは新規プレイヤーが新規登録した翌日もプレイする率が、平均して45%から56%に改善し、実質プレイヤー数の日々の積み上げに成功しましたしかも、このようにして得られた「最初はプレイヤーに能動的な行動を強いない」という結果は高い汎用性をもつため、この知見を他のソーシャルゲームでも活かすことができました。

根拠を持たせづらい推測ではなく、ログを取得し計測することによって、全員が納得して効果的な改修ができます。

この例のように、効果的な改善は正しい状況把握が生まれます。

様々な軸で情報を把握を行うことによって、これまで想定しなかった新しい発見も得られます。

2.推定ができる

会社を把握するためには対象の全データを得るに越したことはありません。

ですが、データを収集する際や分析する際、必要なデータを利用できないこともよくあります。

その場合は分析対象全体の真の平均や合計、比率などがわからないことがほとんどですが、その場合でも、全体の一部を取り出し統計的な推定を行うことによって、ある程度の正確さでそれらを算出することが可能です。

あるサービスの利用者の年代・性別の割合を知りたいというような場合、全利用者のデータを取得できなくても一部から推定値が得られ、また、その値がどの程度ぶれる可能性があるかも算出できます。

こうした推定結果は意思決定の材料として活用できます。

3.予測やシュミレーションができる

計画を思い通りに実行するためには、不確定要素をできる限り小さくすることが重要です。

未来を確実に予測することはできませんが、予測値がどの程度の精度でどの範囲に収まるかを知っておくと、不確実性を考慮した上で計画を立てることができます。

ある SNS 利用者数の推移をシュミレーションするとしましょう。

利用者数の増減においては新規利用者の数がプラス要因となり、サービスの利用を停止した離脱者数がマイナス要因となります。

ここでの現在の利用者数が10万人で毎日の新規利用者数がだいたい5,000人、毎日の離脱者がだいたい2,000人程度だとすれば、1か月後の利用者数は10万 + (5,000 – 2,000)  × 30 = 190,000人という予測を立てることができます。

このように、未来時点での利用者を予測することによって、売上の予測、必要なサーバー台数やエンジニアの見積もりなどが可能になります。

逆に、利用者数を30万人にしたければどの程度の期間が必要なのか、あるいはキャンペーンや広告を打つなどして毎日の新規利用者数を現在の5,000人から2人に増やすべきなのかなどの戦略を考えることもできます。
もちろん、これは大変大雑把な見積もりですし、毎日新規利用者数や離脱者数は増加するものでしょう。

そこで、過去データを参照し、どの程度それらの数が上下するかを見積もることによって予測の精度を高めることができます。
また、過去のデータから未来予測をすることによって利益を改善することも可能です。

また、販売数がその日の気温に大きく関係にし、データから気温が一度上がるごとに販売個数が1割程度増加することが判明したとします。

明日の気温予測が今日より3度上がるというものであったら、今日より3割程度のビールを用意しておくべきでしょう。
それにより商機を逃さずに済み、データを有効活用したことになります。

4.再現と反復ができる

プロセスを経て導かれた結論から再現性を得たり、そのプロセスを反復したりすることが可能となります。
再現性を得ることは、分析で得られた現象の中から、データの取得期間や分析対象などの諸々の条件を変えても変わらない部分的な規則を取り出すことです。対象サービスの対象年代、期間を変えても同じ分析結果を再現できるのならば、このサービスには対象年代によらずに成り立つ規則性があるということができます。
データ解析の枠組みを意識し、何を固定し、何を変更したかを明確にしておけば、その分析で扱ってる間にたまたま含まれていた結果ではなく、より普遍的な結果を取り出すことができます。

反復が可能であるとは、行われたデータ解析のプロセスを誰しも確認・実行できるということです。
反復を実現するには「いつ、どこで、誰が、誰に向けて、どのようにして、どの期間、どういう意図」で分析したのかの情報を残す必要があります。
データ分析手法に誤りがなければ実行可能ですが、データの保存ミスや分析手法の記録ミスなどがあれば反復不可能となります。
反復可能な状況にすれば、同じ分析を他にも使い回せるため分析コストの削減と分析結果の比較が可能となりますし、他の人でも分析や分析結果の検証が可能となります。
勘や経験だけによる属人的な意思決定ではその人しか反復できません。

また、一般にデータ解析は一度きりではなく、何度も反復するものです。
出来る限り反復可能な状況を作れるようにしましょう。

5.裏付けができる

データ解析によって知見を得ることは、決して人間の持つ専門知識を排除する、つまり感や経験を無視するということではありません。

その逆で、データ解析は管理・経験による意思決定をデータで補助・裏付けをするのにも役立つものです。

勘や経験による意思決定が、たまたま正解だったのか、それとも何らかの根拠があってのものなのかを論理的に区別するのは困難です。

そこで過去のデータを用いることによって、勘や経験による意思決定に対して、どうなっなたら妥当性が見出せるのか?を検証することができます。

有益であると判定された知識を他に展開することにより、ベテランの知恵・知識をそのベテランだけに留めるのではなく、組織全体で活用することができます。

データを用いてデータ解析を行う場合、 大切なことはその分野の専門知識でデータ解析を組み合わせることです。

現場で培われた感と経験をさらに役立てる、また、それらを若手や部署外にも伝達して組織として強くするために、データ解析を行いましょう。

次回の記事では、データ解析に見せられる過大な期待や誤用について説明します。

参考資料:
データ解析の実務プロセス入門

著者:あんちべ

出版社: 森北出版

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